集団的自衛権行使、100の学説より一つの最高裁判決

 7月31日、時事通信は「集団的自衛権無効の却下確定=閣議決定めぐり―最高裁」として、次のように報じました。

 『集団的自衛権の行使を容認した昨年7月の閣議決定は違憲だとして、元三重県職員の珍道世直さん(76)=津市=が閣議決定の無効確認を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)は29日付で、珍道さん側の上告を棄却する決定をした。
 訴えを却下した一、二審判決が確定した。』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150731-00000159-jij-soci

 遡って経緯を見てみましょう。

 平成26年7月1日、安倍政権は「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」を閣議決定しました。

 政府の最も重要な責務は、我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うするとともに、国民の命を守ることです。そのために、安全保障環境の変化に対応し、
・まず力強い外交を推進することにより、良好な国際環境を創出し、脅威の出現を未然に防ぐこと。
・国際法にのっとり、法の支配を重視することにより、紛争の平和的な解決を図ること。
・我が国自身の防衛力を適切に整備、維持、運用し、同盟国である米国との相互協力を強化するとともに、域内外のパートナーとの信頼及び協力関係を深めること。

が重要であると述べています。

 特に、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定のためには、
・日米安全保障体制の実効性を一層高め、日米同盟の抑止力を向上させることにより、武力紛争を未然に回避し、我が国に脅威が及ぶことを防止することが必要不可欠である。
・その上で、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを断固として守り抜くとともに、「積極的平和主義」の下、国際社会の平和と安定に積極的に貢献するために、切れ目のない対応を可能とする国内法制を整備しなければならない。

として次のような項目で基本方針を定めています。(詳細略)

1.武力攻撃に至らない侵害への対処
2.国際社会の平和と安定への一層の貢献
3.憲法9条の下で許容される自衛の処置
4.今後の国内法整備の進め方

http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/anpohosei.pdf

 自衛権行使に関する世界の常識は、ネガティブリストで禁止された行為以外は、政府の統治行為権に委ねるというものです。それは環境の変化・事態の変化に迅速的確に対応するためです。その政府は国民の選挙によって選ばれます。従って政府の統治行為権は国民のコントロールのもとにあるのであり、民主主義国では何の問題もありません。
 しかし我が国では、憲法の縛りがあり、ポジティブリストにより、やってよいことだけが決められます。当然、環境事態の変化に的確迅速に対応出来ないことになります。安保法制整備の閣議決定は、憲法の縛りから、環境や事態の変化、具体的にはシナの軍事的脅威に対して、正にぎりぎりの対応策を考えているに過ぎないものなのです。

 しかし閣議決定後の7月11日、今直面している軍事的脅威には目をつぶり、「戦争は嫌だ」という観念だけで、閣議決定を憲法違反として、東京地裁に提訴した者がいました。元三重県庁職員の珍道世直と言う人です。奇妙な名前ですが本名のようです。

●東京地方裁判所に訴えを起こしたのは、三重県の元県庁職員、珍道世直(75)さんです。

 『珍道さんは、政府が今月1日、従来の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認することを閣議決定したのに対し、「戦争の放棄を定めた憲法9条に明らかに違反するもので、国会の審議にすらかけないのは民主的な手続きにも欠けている」と訴えて、閣議決定の無効を求めています。
 さらに、「国務大臣に憲法を尊重し擁護する義務を課した憲法99条にも違反している」と主張しています。
 訴えた理由について、珍道さんは「自分も幼いころに空襲を体験しているが、戦争は絶対にいけない。『戦争の放棄』を願う国民の一人として意思表示をしたいと思った。この思いが多くの人に広がることを望んでいる」と話していました。』
  (2014/7/11 NHKニュース)

●平成26年12月12日、東京地裁は閣議決定無効の訴え退ける判決を下しました。

 『集団的自衛権の行使を容認した憲法解釈変更の閣議決定は憲法違反だとして、元三重県職員の珍道世直さん(75)=津市=が閣議決定の無効確認などを求めた訴訟の判決で東京地裁は12日、訴えを退けた。

 岡崎克彦裁判長は「閣議決定がすぐに原告の権利を制限するわけではない。具体的な法律関係の争いではないので訴えは不適法だ」と述べ、無効確認の訴えを却下。不安を理由とした10万円の慰謝料請求は「個人的感情にすぎない」として棄却した。

 判決後、珍道さんは「閣議決定は手続き上も内容も明白な憲法違反だ。判決は受け入れられないので控訴する」と語った。

 閣議決定の無効確認を求めた訴訟は他にも複数起こされ、これまでに東京地裁や広島地裁で今回と同様の却下判決が言い渡されている。』
http://www.sankei.com/affairs/news/141212/afr1412120043-n1.html

●原告は東京高裁に控訴していましたが、東京高裁は平成27年4月21日、控訴審を却下しました。

 『集団的自衛権の行使を容認した憲法解釈変更の閣議決定は憲法違反だとして、元三重県職員の珍道世直さん(75)=津市=が閣議決定の無効確認などを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は21日、一審東京地裁判決と同様、訴えを退けた。珍道さんは上告する。

 大段亨裁判長は一審判決を支持し「閣議決定がすぐに原告の権利を制限するわけではなく、法律関係の争いではないので訴えは不適法だ」として無効確認の訴えを却下。精神的な苦痛を受けたとする10万円の慰謝料請求は「個人的感情にすぎない」と棄却した。』
http://www.sankei.com/affairs/news/150421/afr1504210021-n1.html

●原告は最高裁に上告していましたが、この7月31日、最高裁は冒頭に記すように上告棄却を行いました。


 昨年7月1日の集団的自衛権法整備に関する閣議決定は、憲法上問題なしとなったのです。

 また安倍政権は、平成14年12月の衆院選において、集団的自衛権に関して、「憲法解釈の閣議決定に基づき、安全保障法制を整備する」ことを公約に掲げ、自公連立とは言え3分の2超となる議席を確保し信任されました。政治手続き的にも何の問題もありません。

 それにも係わらず、6月4日、衆院憲法審査会に呼ばれた憲法学者3名が全員、「集団手は自衛権行使は違憲」と述べました。まぁこれは、意見を求められたから述べただけですからあり得ることですしょう。しかし同日、憲法学者173名が「安保関連法案は、憲法9条が定めた戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認の体制を根底から覆すものである。速やかな廃案を求める」と声明を出しましたが、憲法学者は違憲審査権を持っていると誤解しているのでしょうか。

150803安保法制・憲法学者・声明

 憲法の時代の変化、環境の変化などに対応した解釈は、一切認めないと言うのです。一寸待って下さい。例えば今私学に税金から補助金が投入されています。憲法 第89条には「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」とあります。私学への公金支出は違憲なのです。

 憲法学者には私学に奉職している人も多数いますが、憲法に照らすと自分の得ている給与の一部は違法に得ていることになりますから、返上しなければなりません。憲法学者は集団的自衛権で筋を主張するなら、自分の給与についても返済をするなど筋を通さなければなりません。それでいいのですか。

 国を守るよりも憲法を守る方が大事だという現実が見えない憲法学者にはあきれます。

 憲法学者がなんと言おうが、憲法解釈の権限は最高裁にあり、憲法学者でも内閣法制局でもありません。最高裁のみが憲法解釈の最終的な判断ができると憲法81条に明記されています。
 違憲か合憲かを判断できるのは「最高裁判所」だけなのです。その最高裁がこの度、安保法制整備の閣議決定を違憲でないとしました。憲法学者173名がなんと言おうと、これで決着がつきました安倍首相は胸を張って、我が国の安全保障の法整備を進めて下さい。更にはその先として国家の安全保障を進める上でガンになっている、そして我が国を存亡の危機に陥れかねない「平和憲法」改正を進めて下さい。

以上
(うまし太郎)
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未分類 | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2015/08/03 11:56
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