衝撃のシミュレーション「中国は5日で日本に勝利」

 米国のランド研究所と言えば、1946年設立、従業員1600人を抱えるシンクタンクで、軍の戦略立案と研究を目的とした出自から、研究の半分は国家安全保障問題に関係している(2004 年)とのことです。(Wikipedia)

そのランド研究所が尖閣を巡る日中衝突の問題に関して、「中国は5日で日本に勝利」するとの軍事的シミュレーションをし、米国は尖閣に関わるなと警告を発しました。彼らのシミュレーションによると、日本は尖閣諸島をめぐる中国との戦いにおいて5日間で敗北し、手も足も出なくなるというのです。
 衝撃的です。本当にそうなのか、日本はどうすべきなのか。一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構研究員で米国政軍関係、同国防政策、安全保障全般が専門の部谷直亮氏は、「自衛隊の体制の抜本的な改革を」と提言しています。

 部谷氏は軍事技術面で提言しているのですが、より本質的なことでは、本来は尖閣の当事者である日本がこのようなシミュレーションを行い、合理的で戦略的な軍事対応力強化を図るべきであるのに、日本には軍事シンクタンクはないし、防衛省はそのような研究をしているかどうか。いずれにせよ、我が国の防衛予算は、GDPの1%の根拠のない数字に縛られ、その増加率は誠に微々たるものです。国防に関する国家の強い意志が感じられないのです。
 
 1月27日付けのJBプレスの部谷氏の記事から要旨紹介させて戴きます。
   http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45849

(紹介始め)

    160129ランド研・シナの弾道ミサイル 
    天安門広場パレードの中国の新型対艦弾道ミサイル

 このシミュレーションを取り仕切ったのは、ランド研究所の上級アナリスト、デヴィッド・シラパク氏。彼は中国の軍事問題やウォーシミュレーションの権威として知られている。同氏は30年以上も米国の将校と外交官のために精緻なシミュレーションを作成してきた。

 彼はつい先日、外交専門誌「フォーリンポリシー」の記者たちを招いて、尖閣諸島における「5日間戦争」をシミュレートし、彼らに概略を公開させました。その内容の概略は次の通り。

【1日目】
 日本の右翼活動家たちが、尖閣諸島の魚釣島に上陸し、日本の国旗を掲揚し、YouTubeで中国を挑発。日本政府が対応に追われる間、中国はただちに海警を送り込み、全員を逮捕・拘束する。

【2日目】
 日本は周辺海域に護衛艦や戦闘機を展開。中国側も海軍艦艇を展開し、一瞬即発の状況になる。日本は、米国に防衛義務を果たすように要請し、米国は受諾。日本側の要請に応じて、米駆逐艦を日本海にも展開し、尖閣諸島周辺には攻撃型潜水艦を送り込む。ただし、空母は横須賀から西太平洋に避難させる。

【3日目】
 中国の海警が尖閣諸島周辺の日本の漁船と衝突し、沈没させたことで事態はエスカレート。海上保安庁は、放水等で対抗する。中国のフリゲート艦は30ミリ機関砲を空自機に対して発砲、これに日本側も応戦。その結果、中国側が航空機と対艦ミサイルで反撃し、2隻の日本側の艦船が撃沈し、500人が戦死。

 もはや、日中間の外交チャンネルは一切機能しなくなり、日本政府は米国に、より多くの支援を要請。日中それぞれに存在する米大使館は、現地の市民によって包囲され、米国の保守メディアは自国政府の弱腰を批判し、上院議員たちは激論を交わす。

 しかし米政府は、『日本の要請にゼロ回答だと他の同盟諸国が離反しかねない。だが、要請に完全に応じれば、同盟諸国の不信よりも多くの国益を失う米中全面戦争になりかねない』というジレンマに陥る。そこで、米兵のリスクが少ない、米潜水艦による中国軍艦艇への魚雷攻撃を選択。これは中国への警告のためであり、米中戦争を引き起こすためではなかった。その結果、中国軍の駆逐艦2隻を撃沈し、今度は中国軍の水兵数百人が戦死する。

【4日目】
 中国指導部は事態の展開に驚愕する。ここで、中国側も米中の本格的な戦争を避けつつ、米国に痛みを与えることを決断。今や中国には何億人ものネット市民が存在し、彼らの報復を求める声を無視することはできないからである。

 中国側は、米国の送電システムに埋め込まれている破壊工作ソフトウエアを起動し、ロサンゼルスとサンフランシスコを停電に追い込む。そして、証券取引所の自動取引システムを操作し、何百億ドルもの損害を与える。極めつけは米国債の売却をほのめかし、急激なドル安へと追い込む。

【5日目】
 中国軍は尖閣諸島周辺の海自艦艇に対して、弾道・巡航ミサイル中心の攻撃を継続する。そして、24時間で海上自衛隊は戦力の20%を喪失。同時に中国は日本経済への攻撃を開始する。日本の脆弱な送電システムを作動不能に追い込み、重要なジェット燃料の精製所を爆破する。

 ここにきて、日本は再び米国に支援を嘆願する。具体的には、西太平洋に展開する空母打撃群の参戦、中国軍艦艇へのさらなる攻撃、中国本土の対艦ミサイル基地の破壊などである。

 しかし米側は全てを拒否する。その代わりに、米軍の潜水艦と航空機を増派し、海自の撤退を支援。米中総力戦を回避しつつ、日本の海自と経済の壊滅を回避できるという考えに基づく行動だった。この海自部隊の撤退を以てゲームは終了。中国は尖閣諸島を確保する。

 こうして中国は“短期的な”勝利者となる。ただし、日本やアジア諸国は中国に対抗するための軍拡と経済連携を加速させる公算が高く、「割に合わない勝利」と評するべきかもしれない──。

【提言】
 米国は尖閣諸島をめぐる紛争を「無視するべき」

 以上がランド研の日中5日間戦争のシミュレーションと提言である。

 シラパク氏は、もし「米国が日本の要請に応じ、空母打撃群を尖閣諸島周辺に派遣し、中国本土の対艦ミサイル基地を叩いていたらどうなっていたか」についても検討を加えた。その場合のシミュレーションは次の通り。

・中国の弾道ミサイル攻撃により嘉手納基地が壊滅し、米空母も対艦弾道ミサイルによって撃沈し、死者は数千人単位に及ぶことになる。

・米側はこれに対し、中国海軍の重要な基地を攻撃するか、中国軍唯一の空母を撃沈するか、中国経済を窒息させるために南シナ海の封鎖を継続するか、のいずれかができる。

・しかし、米軍は日本の島嶼や海自の防衛には協力しない。

・その結果、中国側は無制限の損害を日本に与えることができることになる──。

 そして、彼らは5つの結論を導き出す。
第1:同盟には「巻き込まれる」という危険な面もある。

第2:対日防衛義務の多くは履行するのは難しい。ミサイル防衛は不可能ではないが、中国の膨大なミサイル保有量を考えれば難しく、日本は脆弱である。

第3:中国の大軍拡および彼らの新しい戦争方法は全てを変えた。今の中国には現代的な海軍、多数の強力な弾道及び巡航ミサイル、効果的な空軍、洗練された無人機がある。10年前の日本ならば単独で尖閣諸島を防衛できただろうが、今や時代は変わった。

第4今や米空母は中国の対艦ミサイルに対して脆弱な存在である。

第5:日米中におけるナショナリズムは事態を悪化させ、政策決定者の選択肢を奪うという意味において非常に強力であり、致命的な存在である。

結語:「米国が日中間の尖閣諸島をめぐる戦いに関与することは、特大の戦略的な失敗でしかない。尖閣諸島における危機管理の最高の手段は、無視することなのかもしれない。」

●以上の内容は日本にとってどのような意味を持つのでか。次のように「自衛隊の体制の抜本的な改革」が求められる。

第1:米国をどのように日本の戦争に引きずり込むか、そのための軍事的、政治的、経済的、文化的な手段を組み立てておく必要がある。ランド研究所を代表するリアリストまでが、尖閣諸島問題に関わるべきではないと公言する時代になってしまったのだ。少なくとも、平和安全法制のような、米国の善意に期待するもの“だけ”では不足であろう。

第2:このシミュレーションは自衛隊の体制の抜本的な改革の必要性を示唆しているということだ。

 中国のサイバー攻撃および大量の弾道・巡航ミサイル等による奇襲能力、すなわちA2/AD戦力が、有事における米軍の活動および来援を困難にするレベルに達しているというのは、米国の議論ではすでに前提となっている。米軍ですらそうなのであるから、自衛隊がより困難な状況にあることは言うまでもない。

 しかも、現在の自衛隊の戦力構成は、中国の対地・対艦弾道ミサイル攻撃等、そして、サイバー攻撃やゲリラコマンド攻撃に対して非常に脆弱と言わざるを得ない。

 海自のいずも型ヘリ空母は弾道・巡航ミサイル攻撃の前には無力だ。中国の対艦弾道ミサイルDF-21は1ユニット6~12億円、いずもは1隻1200億円であり、100発撃ち込んでもお釣りがくる計算である。
 海自の対潜能力は最高水準であるが、対ミサイルには関係なく、そもそもミサイル保有数も限定的だ。空自の基地にける戦闘機用の掩体壕(えんたいごう)は少数であり、ミサイル弾薬のほとんどが高蔵寺弾薬庫に集中している。陸自はそもそも輸送力が決定的に不足しており、国内の有事の輸送は日本通運、通信はNTTが頼りなのである。

 中国は、こうした自衛隊の脆弱な面に特化して軍拡をしてきたと言っても過言ではない。

 どのようにすれば継戦能力を有事に維持することができ、中国のA2/AD能力を無効化・緩和できるのか、どうすればたった5日間で尖閣諸島を奪われるという屈辱的な事態に至らないで済むのか、自衛隊のあるべき戦力構成や作戦構想について真剣に議論すべき時が来ている。

(紹介終わり)
以上
(うまし太郎)
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未分類 | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2016/01/29 22:36
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