消費税増税で日本経済をミスリードした人達

 産経新聞の「番頭の時代」は、優れたリーダーのもとには優れた番頭ありとして、数々の事例を分析した中々読み応えのある特集記事です。2月2日号では、前内閣法制長官故小松一郎氏と前財務省事務次官故香川俊介氏を取り上げていました。

小松一郎氏は、末期ガンに冒された中で、安倍首相の信任に応え、「安保法制懇」で集団的自衛権の行使を可能にした憲法解釈の見直しの報告書をまとめました。その国会審議に当たっては、余命いくばくも無いことを悟って安倍首相に「自分の残りの人生をかけて責任を全うさせて下さい」と、治療を受けながら国会で答弁に立ち続けました。そして解釈見直しの閣議決定は見届けられぬまま、63歳で不帰の客となりました。昨年大騒ぎがあった安全保障関連法は、「小松」という番頭抜きではなしえなかったとのことです。官僚に対してとかく批判のある中で、壮絶な生き様を示す官僚もいるのだと感銘します。

●もう一人の香川俊介氏も58歳という若さで亡くなりました。香川氏が見届けることが出来なかったものは何か。それは消費税率10%引き上げでした。

 香川俊介氏は東京大学法学部出身で昭和54年大蔵省(現財務省)に入省、早くから「財務省のエース」と目され要職を歴任し、平成26年7月から1年事務次官を務めました。

 香川氏は消費税を導入した竹下内閣で、官房副長官であった小沢一郎氏の秘書官に抜擢され、民主党の野田内閣のとき、政界工作を担う官房長として、「社会保障と税の一体改革」で奔走、迷走を極めた民主党政権下で、消費税増税を確定させました。それは香川氏の胆力と人脈なしにはあり得なかったとのことです。

 「決して人の悪口は言わず、上にも下にも臆することなく、偉ぶることのない」至誠の人だったと当時の上司は評価しています。人間的に素晴らしい人だったようです。

 菅官房長官は、消費税増税を巡り官邸と激しく対立した香川氏について、「あいつの影響力は凄く大きかった。再増税は必ず政局につながる」と述懐します。26年12月の総選挙は消費税再増税を問う選挙と言われました。安倍首相が国民から信任されたその禊ぎにより、財務省を黙らせることが出来たとも言われています。

                 160202財務省

財務省はなぜそれほど強いのか。首相が選挙で対抗しなければならない程の独善を発揮出来る強さとは何か。それほど独善的であって、どうして安倍内閣の「番頭」の機能を果たしたと言えるのか。香川氏は何をしてきたのか。
 
 当たり前のことですが、財務省は限られた税収に対して、予算配分と政策の調整をし、予算案を策定するのが最大のミッションです。策定に当たっては、政治家も絡む中で強力な調整能力が必要
になります。そのためには日頃からの政治家を含めた関係者に対する幅広い情報収集力と人脈構築が必要とされます。

 パナソニックの前身、松下電器には「経理社員制度」があってその発展を支えた原動力と言われました。独立性の強かった事業部門の経理担当は、本社の経理部から派遣されました。経理担当は専門能力で事業部門長を補佐すると共に、本社としての統制を果たします。
 財務省も同様で、各省庁の経理担当に麾下の役人を配置しているようです。要は財務省の息のかかった人間が役所のあちこちにいると言うことです。それが情報収集力と調整能力を高め、財務省の強さの源泉になっていると言えるのでしょう。

 そしてその強さで、政府の政策を予算化し、かつその円滑な実施を図るのがミッションであるはずです。

 しかし強さを発揮している中で、独善が出てきているのが消費税増税問題と言えます。善意に解釈すれば、頻繁に変わる政権の頼りなさに対して、専門の立場から意見具申をするというのは何の問題もありません。問題は間違った意見を自己主張し、自己の強さを利用して、政治家もマスメディアも洗脳し、マスメディアを通じて国民までも洗脳してきたことです。その独善を破るためには、時の政権が総選挙に訴えて国民の支持を得なければならない事態になっている程としたら、それは異常と言うべきです。

消費税増税と緊縮財政への固執
 高齢化社会を迎え国の予算規模は膨れ上がります。一方税収の伸びはありません。税収を上げなければならないのは当然です。問題はどのようにして上げるかです。

 方法として2つあります。増税と経済成長です。税収は経済成長に比例します。
 しかし財務省はなぜかひたすら消費税増税に固執します。また緊縮財政に固執します。消費税増税は経済成長を阻害し、結果として全体の税収を減らすのは、データが示すところです。税収が減るから緊縮財政を採る。緊縮財政を採れば、経済成長を阻害する。失われた20年とは、この同じことの繰り返しでした。

 平成26年4月、消費税率を8%に引き揚げた途端、景気は失速し今に続いています。事態はかなり深刻です。1月29日総務省発表の家計調査によれば、実質消費支出は対前年同月比でマイナス4.4%、消費税増税前の平成25年12月比でマイナス8%と、国民は貧困化にまっしぐら、すなわちアベノミクスが狙ったデフレ脱却など出来ていないのです。

 財務省はそれでも消費税増税と緊縮財政の失敗した同じパターンを繰り返すのですか。

香川氏は何をしてきたのか
 産経の「番頭」の記事によれば、消費税率10%は香川氏にとって信念、その理由は債務残高1千兆円超と世界最悪、従って消費税増税と思い切った歳出削減が必須だとのことです。

 「債務残高1千兆円超と世界最悪」とは、まさかの話ですがバランスシートを見ていないと言うことになります。債務の反対側に資産があります。平成25年段階で国の資産は653兆円で、高橋洋一氏によれば、先進国と比較して日本政府のバランスシートの特徴をいえば、政府資産が巨額で世界一であり、負債から資産を引いた純債務のGDP比では、欧米諸国と同じとのことです。

 「国の借金は1千兆円、国民一人当たり○○万円」とは、時々新聞を賑わせます。国民はやばいと思い、緊縮財政はやむを得ないと思い込みます。それを仕掛けているのが財務省です。

 香川氏は、官房長時代から政治家と、マスメディアを通した世論工作に力を入れ、若手官僚を中心に組織された100人規模の政界工作部隊を指揮し、それは香川氏の指令ひとつでメディア工作部隊にも変身したとのことです。(週刊ポスト平成23年10月7日号)

これは自分たちの主張に対して、都合のいいデータのみを掲げて相手を洗脳しようとしているのであり、悪質と言うべきです。

 そのため政治家も国民も騙され、緊縮財政はやむを得ないとなり、結果としてアベノミクスは、第1の矢の日銀の金融緩和に頼るだけであり、第2の矢の「積極的な財政出動」は大してなされずに来ました。そして国民は貧困化に向かっているのです。

 香川氏は、「胆力と人脈がある人、仕事が出来る影響力の大きい人、至誠の人、人間的にも素晴らしい人」だったとのことです。しかし、間違った対策に信念を持ち、財務省の強さを背景に政権をミスリードしてきたのではないかと、産経の「番頭」としての評価に対して違和感を持ちます。なお、亡くなくなった人を誹謗するものではなく、香川氏を財務省に置き換えての話です。

以上
(うまし太郎)

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未分類 | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2016/02/03 13:38
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