「憲法改正の実現に向けて」百地章先生のお話

 日本大学教授の百地章先生は、ご専門が憲法学と「だじゃれ」とのことです。現在、「美しい日本の憲法を作る国民の会」の幹事長をされています。3月19日、横浜で新日本協議会田中塾主催の「憲法改正に向けて」と題した講演会がありました。だじゃれを連発して会場を大笑いさせながら、憲法改正実現の意味合いや課題の全体像を分かり易く説き聞かせてくれました。
 
 憲法改正は、どのように改正するのか、明治憲法(大日本帝国憲法)復帰説や新たな自主憲法制定説など心情として分かる正面突破説がありますが、国会議員総員の3分の2、かつ国民投票で過半数の賛成というハードルの高さを考えれば、現実論で行かざるを得ないし、タイミングとしては、今支持率の高い安倍政権で出来なければ、未来永劫に改正は出来ないかも知れません。世論形成の環境としてもマスメディアと憲法学者の大半が、「狂信的」な護憲派ときています。

 しかし世論調査によると、国民の7割が改正に賛成という時代になっているのも事実です。「狂信的」な護憲派の「狂信的」なマイナスキャンペーンに負けては、元も子もありません。彼らに打ち勝つ改正への戦略が求められます。今なぜ憲法改正が必要なのか、何をどのように改正するのか、改正への手順は妥当なのかなど、国民の大多数が正しく理解することが「狂信者」に打ち勝つ道と言えるでしょう。

 百地章先生はそのような視点でお話しされたと思います。要旨を紹介させて戴きます。

       160319百地章氏

1.今なぜ憲法改正が必要なのか
(1)現憲法には「欠陥」がある
(a)国民の意識の変化

 平成27年3月の時事通信社の世論調査によると、次のようであった。周辺国からの軍事的脅威に対して、国民世論は憲法9条の問題などを正しく理解し始めているのではないか。
・憲法改正に賛成:73.1%
・憲法改正に反対:18.6%
憲法は国家のためにあるのは自明、しかし今まで「憲法のために国家がある」との倒錯した世論が勢力を占めていた。
 憲法改正へのハードルが高いのも欠陥。ちなみに日本国憲法は1度も改正されていないが、ドイツ憲法は59回、フランス憲法は24回改正されている。

 憲法を構成する要素として、国柄と統治ルールがある。国柄は原則変更不可、一方統治ルールは、環境の変化に対応して変更していくべきものだ。

(b)最大の欠陥は、緊急事態規定が存在しないこと
 憲法に規定がない国はない。1990年以降、世界で102の国で憲法が出来たが、全てに緊急事態規定が定められている。

 今我が国は次のような緊急事態発生に直面している
●大規模テロ発生の恐れ
・ISなどによるテロによって、もし原発が狙われたら?。皇居、官邸、国会が狙われ、ドローンが飛んで来てサリンを撒かれたら?。
・自衛隊法81条の2項に自衛隊の警護出動規定がある。しかし現法の対象は、自衛隊施設と米軍基地のみ。
・野党は自衛隊法改正など個別対応でよいとしているが、それでは対応が制限されてしまう。

●大規模自然災害と国家緊急事態の発生
・災害対策基本法で災害緊急事態の布告が出来る。しかし憲法29条「財産権の不可侵」により、東日本大震災では、ガレキにも財産権があるとされ、ガレキ処理が思うように進まなかった。
 道路交通法により、緊急車両も交通信号を守ることが求められた。道路交通法には非常時対応規定があり政令布告できるから、野党は現法政令の布告で対応出来るとしている。しかし後で護憲派から違憲訴訟の恐れがあるため、政令はタイミングよく思うようには作れない。憲法での根本規定が必須だ。

 「そもそも政令で対応出来る」と言う考え方は、何でも出来ることに成り立憲主義に反する。ウソがあり矛盾があっても平気なのが今の野党だ。

 首都直下型地震は、30年以内に70%の確立で発生するとされている。有史以来の歴史的事実として、三陸地方にM8以上の地震が4回発生したが、10年以内に関東直下型地震が起こっている。東日本大震災から4年経った。従って統計的には今から6年以内に100%の確率で首都直下型地震が起こる。(京都大学藤井聰教授)

☆憲法に緊急事態条項の必要性
 明治憲法8条に「緊急命令」条項が定められている。関東大震災では、緊急命令が発せられ、ダイナミックな対応が図られた。
 なお、「緊急命令」とは、議会が開けないような緊急事態において発せられる命令で、後日、議会の承認を得るもの。各国憲法にもその条項がある。
 
☆憲法改正の焦点は「緊急事態条項」
 もし首都直下型地震が発生し、国会が召集出来ない緊急事態が発生した場合、どうするのか。首都直下型地震発生は「国家存亡にかかわる問題」である。(中央防災会議)。

(c)現行憲法はGHQから強制されたもので正当性がない
・占領政策の目標は「日本の弱体化」であった。現憲法はその目標達成のために制定された。
・憲法制定過程において、公職追放20万人、国会議員240人の追放、突きつけられた憲法審議のための「芦田委員会」は秘密会で、国民の知らないところでの審議が逐一GHQのチェックを受けていたことなど、正当性がない。
・我が国を「真の独立国家」として再生させるためには、憲法を抜本的に見直す必要がある。

2.抜本的な見直しの一つとして「国家」、「家族」の規定を!
(1)「国家」の規定
・現憲法は「国家」、「家族」が不在。個人を絶対視し、個人が社会契約説により国家を形成するとしている。社会契約説は国家と政府を混同している。国家と政府は異なる。
・「国家」とは、歴史と伝統を共有する「国民共同体としての国家」(ネイション)である。→「国を守る」、「国を愛する」と言う場合の国家はこれである。
・「政府」とは、統治機構のこと。社会契約説は統治機構を「権力機構」として「国家」とした。間違いである。国民が形成出来るのは「政府」である。

☆憲法に「国民共同体としての国家」(歴史的伝統的な国家)を!
・我が国は建国以来2千年以上にわたって、皇室を国民統合の中心に戴き、繁栄と発展を遂げてきた。これが誇りとすべき国柄である。
・憲法にこの「誇りある日本の国柄」を盛り込み、国民に誇りと自信を取り戻させる必要がある。

(2)「家族」の規定
・「家族」には2つの意味がある。
(a)横軸の家族→結婚つまり「両性の合意」に基づいて成立する「家族」(現憲法24条)
(b)縦軸の家族→先祖以来伝えられてきた「伝統的共同体、生命の連続対としての家族」(現憲法にない)

☆憲法に「伝統的共同体としての家族」の規定を!
・「教育の再生」、「家族の介護」の場としての「家庭」、「家族」の再評価を。

3.憲法改正内容の課題
(1)前文
(a)憲法前文では「平和を愛する諸国民」に我が国の「安全」ばかりか「生存」まで委ねている。
・李承晩ラインにより「竹島」が奪われ、その折り韓国の不法拿捕により抑留された日本漁民は約4千人死者は44人、物的被害は当時の金額で約90億円も出している。これが現実であり、現憲法は「似非平和主義」に立脚している。
・海保も自衛隊も憲法遵守のため、領海侵犯船に対して銃器の利用が出来ない。

(b)前文に我が国独自の「国柄」が全く表現されていない。
・明治憲法制定時の明治9年、「国憲起草を命ずる勅語」として、「建国の体に基づき、広く海外各国の成法を斟酌し、以て国憲を定めんとす」と発せられた。国柄を拠り所とすることと万国共通の普遍性を求めたのであった。
・それを受けて井上毅は、日本の古典を一生懸命勉強した。

☆前文において国柄を盛り込む必要がある。

(2)天皇
☆天皇は現憲法では「象徴」であるが、「君主」であり「元首」であることを明記すること。
☆天皇は有史以来、民の幸福と国の安泰を祈るご存在であった。「皇室祭祀」の条項を憲法に明記する必要がある。

(3)防衛・安全保障の抜本的解決に向けて
(a)第9条2項「戦力の不保持」のもとでは、自衛隊は「軍隊」ではなく、「警察組織」である。「警察組織」では侵略を阻止出来ない。
・軍隊と警察との違い
軍隊の権限:ネガティブ・リスト方式で規定→国際法等によって禁止されていない限り、権限の行使は原則自由
警察の権限:ポジティブ・リスト方式で規定→法律で書かれていることしか出来ない。権限は限定的
・従来の憲法論では、ネガティブ・リスト方式、ポジティブ・リスト方式の記述は全くなかった。
・現憲法と自衛隊法の下では、外国からの「武力攻撃」があった場合しか、武力で対処出来ない。武装漁民による領域侵犯(尖閣諸島上陸等)を武力で阻止出来ない。

☆憲法を改正し自衛隊を「軍隊」とすること。

(b)第9条1項の「平和主義」は堅持(改正しない)

(4)憲法改正条項(96条)の改正
(a)現憲法は、世界1,2を争うほど改正条件が厳しい。
・両院(衆議院・参議院の総議員)の3分の2+国民投票で過半数の賛成が必要。
  ・明治憲法は両院の定足数(総員の3分の2)の3分の2。
・アメリカは、両院(定足数=過半数)の3分の2+州議会の4分の3
・ドイツは、両院の3分の2
・改正条件が厳し過ぎるため、憲法96条は実質としては「憲法改正阻止条項」になっている。

☆96条の改正を!
・目的:憲法改正権を主権者の国民に取り戻し、現実の変化に対応出来るようにする。

4.憲法改正実現に向けての今後
・国会による「憲法改正の発議」は時間の問題になってきた。
・問題は国民投票。9条の会等護憲派は必死になっている。マスメディアもマイナスキャンペーンを張る。現実的推進故論として、「美しい憲法をつくる国民の会」の「一千万人賛同者拡大運動」にご協力を!

以上
(うまし太郎)

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未分類 | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2016/03/22 10:20
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