らかんさんのことば

「らかんまわし」と言う子供達の伝統的な遊びがあります。皆で輪を作って座り、
  「らかんさんがそろったらまわそじゃないか」で手拍子を打ち、
  「よいやさの」で自分の面白おかしいポーズを考え、
  「よいやさ」で自分のポーズを取り、
  「よいやさの」で自分の左側の人のポーズを観て覚え、
  「よいやさ」で左側の人のポーズをのマネをする
そして、これを繰り返す、というものです。

らかん(羅漢)さんとは、お釈迦様の弟子である仏教の修行者で、悟りをひらき功徳の備わった人のことを指して言います。16人の弟子を十六羅漢、500人の弟子を五百羅漢と称し、人々から尊敬されました。

室町時代から、禅宗のお寺に羅漢像が奉納されるようになったようですが、全国で旅行の途中でお寺にお参りするときになどに、よく石像の羅漢さんに出会います。そしてこの羅漢さん達は大変面白いのです。修行を積んだ賢人聖者のイメージではなく、一人ひとりが人間味溢れたしぐさや表情をしているのです。物思いにふけっている、口を開けて大笑いしている、何か叫んでいる、泣いている、まどろんでいる、・・・などなどで、私達と同じ生身の人間の喜怒哀楽を表しているのです。このような羅漢さんの姿が庶民に親しまれ、らかんまわしの遊びなどに繋がったものと思われます。

個人的な話ですが、家族でたまたま兵庫県加西市の羅漢寺を訪れたとき、娘とずいぶん似た羅漢さんがいて、家族で大笑いしたことがありました。写真がなかった昔は、五百羅漢は、人々にとって懐かしい自分の肉親の姿であったり、恋人の姿であったりで、懐かしい人の面影を偲ぶことが出来る有難い場所だったようです。

江戸の落語に「五百羅漢」があります。江戸名物の大火で、親とはぐれて恐怖のあまり言葉を失ってしまった女の子を、八百屋行商人の八五郎が親探しをするのですが、手がかりが何もない、さんざん困って、「いいや自分の子にするか」と思いながら、ふと気付いて女の子を五百羅漢寺に連れて行き羅漢さんに会わせます。女の子は、羅漢さんを順番にジーと見つめて、とうとう指差します。そうして親子の再会を果たすというお話です。

このような御利益のせいか、またはお釈迦様の教えをユーモラスな羅漢さんを通じて庶民に伝えるためか、全国各地に五百羅漢を祀る寺が多数建立され今に至っています。

さて前置きが長くなりました。羅漢さんはそれぞれ、人が生きるための智恵、人としての大事な徳目などを体現しているようです。それはそもそもはお釈迦様の教えを伝えるためだったのでしょうが、日本の歴史・文化・伝統の中で育まれ、人々の生活に定着し、現代にも通用するものが多々あるようです。

東京は目黒区に五百羅漢寺があります。
  http://www.rakan.or.jp/index.html

江戸の元禄期に本所両国に建立され、明治時代に目黒に移築されました。ここには、木造の等身大の羅漢像が、もとは536体あったそうですが現在は304体、安置されています。江戸時代の仏師、松雲元慶禅師一人の作で、芸術的にも優れたもののようです。

明治・大正期に活躍した現代彫刻の父と呼ばれる高村光雲(高村光太郎の父、上野の西郷隆盛像の制作者)は修業時代、本所にあった頃の羅漢寺に通い、松雲の彫刻を手本にし、また後年、東京美術学校の教授時代に、弟子達に松雲の作品を参考にするように指導したそうです。

目黒小百羅漢

羅漢像は、本堂に158体、羅漢堂に146体安置されています。羅漢堂ですが、入ると一瞬、等身大の羅漢像の集団が目の前に迫ってきて、圧倒される思いがします。ずらりと並んだその姿は、西安の秦の始皇帝の兵馬俑を思わせます。そしてそれぞれの羅漢さんは、人が生きるための智恵と人としての大事な徳目などをそれぞれ伝えているのです。その146の中から、いくつかを例として紹介させていただきます。これらの中から人々は、自分の人生訓を見つけて来たのかも知れません。そして今も可能かも知れません。

  ●自分自身を静かに見つめる(境界尊者 きょうかいそんじゃ)
  ●心をいつも平らかにし、気を和す(光明綱尊者 こうみょうこうそんじゃ)
  ●慢心を除く(鉢利羅尊者 はつりらそんじゃ 以下略)
  ●理想を高く持つ
  ●自分から実行し、叡智をひらく
  ●いつも素直な心を持つ
  ●苦労を乗り越え、人生を深く味わう
  ●どんな苦難にも退かず、堪え忍ぶ
  ●善意は報酬を求めない
  ●相手を敬う心で人に接する
  ●人の長所を見る
  ●回りに左右されず信念を貫く
  ●わずかな水も常に流れれば石をうがつ
  ●人のいやがる仕事をすすんでやる
  ●おのれを制御できる人ほど自由である
  ●どんな人にも清らかな本心がある
  ●黙ってよいことをする
  ●おのれに厳しく、人には寛容
  ●徳あれば孤ならず、必ず隣あり
  ●おかげさまでという謙虚な心
  ●・・・

(うまし太郎)
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未分類 | コメント:(0) | トラックバック:(1) | 2012/06/13 10:42
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