世界を救う日本型モデル

 過日、「士気の集い」による元駐ウクライナ大使馬渕睦夫氏の「世界を救う日本型モデル-ウクライナ危機から我が国体を考える」と題したお話を伺いました。

 馬渕氏は、少年43年外務省入省、以降数々の要職を務め、在外では、イギリス、インド、ソ連、ニューヨーク、EC、イスラエル、タイに勤務、平成12年駐キューバ大使、平成17年駐ウクライナ兼モルドバ大使、平成20年外務省を退官、防衛大学教授に就任、平成23年定年退職されました。

 著書には、「国難の正体」(総和社)、渡部昇一先生との対談本「日本の敵」(飛鳥新社)、「感動的な日本の力」(総和社)があります。
 近年は、チャンネル桜にも度々登場し、独自の切口で論陣を張られています。

馬淵睦夫氏

 馬渕氏は、何故軍事的に劣勢であった毛沢東の共産軍が、強力な蒋介石軍を破ることが出来たのか、何故アメリカは朝鮮戦争で、軍事的に圧倒的に勝っていたのに、あれほど苦戦し、多くの若者を犠牲にしなければならなかったのか、何故アメリカは勝てるはずのベトナム戦争に勝てなかったのかなどを問います。世界の裏には金融資本主義の妖怪が徘徊している、中華人民共和国は、アメリカとイギリスの金融資本が作ったなどと言います。

 米英の金融資本が巨大化し、自己の利益のために政治家を操り、世界を操ったと言うのです。金融資本は、自己の利益のためには、自国の若者が血を流しても一向に構わない、そういう冷酷さを持つ存在であり、その視点で世界の現代史を見ると、誠によく世界が見えてくると言います。

 その金融資本は、今は「グローバリズム」の名の下に、国境をなくし世界を支配しようとしている、それはかって共産主義が、コミンテルンを頂点として各国に共産党支部を作り、国境をなくして支配しようとした構造と全く同じだと言います。

 共産主義は、結局は国内の貧富の格差を拡大し、国民経済を貧困にし、その歴史的評価の中で消滅しました。しかし今、「グローバリズム」が「地球市民」とか「多文化共生」とかの美名の元に世界を覆おうとしています。しかし実態は、国境をなくした「世界市場」で金融資本が勝つためのものでしかない。しかもグローバリズムの基では、貧富の格差が拡大しているのは、かっての共産主義と同じであり国民を不幸にすると言います。

 グローバリズム(グローバル市場推進)に対抗できるものは何か、それはナショナリズム(国民経済優先)であり、今回のウクライナ危機の正体は、米欧のグローバリズムに対するプーチンの反発である、そのプーチンは、ロシアを経済を含めてどういう国家にしたいと思っているのか、そこに世界唯一貢献できるのが「日本型モデル」である、というのが馬渕氏の考えのようです。

 前置きが長くなりました。お話のポイントを紹介させていただきます。

●ウクライナ危機の正体
(1)ウクライナ危機は、たまたまではなく筋書きがある。本質は米欧によるプーチン潰しだ。ロシアは資源国家。しかしグローバル市場に組み込まれていない。米欧は資源を狙い、組み込もうとしている。週刊誌が言う「プーチンの暴走」ではない。

(2)ソ連崩壊後、ロシアはハイパーインフレに見舞われ、エリツィン時代、GDPは半減した。

(3)米欧による支援では、国営企業の民営化が図られ、そこに外資と結託した新興成金や特権階級が生まれた。背後にアメリカがある。NGOの「オープン・ロシア・ソサィティ」の理事長はキッシンジャだ。彼らの狙いはロシアの資源を押さえることであった。

(4)2003年のイラク戦争は、米の石油利権のため。それを知ってプーチンは、成金や財閥を追放し た。

(5)プーチンは、米欧によるロシアの天然資源争奪戦に強硬に反発しているのである。

●グローバリズム(グローバル市場化推進)対ナショナリズム(国民経済優先)
(1)グローバリズム
①国境を廃止し、物、金、人の移動を自由にする
②国家の様々な規制や伝統的商慣行を廃止、一つのルールでやる
③金融資本(外資)が自由にビジネスが出来るグローバル市場を作る
④政府の公共サービスを含め全てを民営化する(刑務所の民営化、民間の軍事会社はすでにある)
⑤国際金融資本家が支配する世界政府を樹立する(デビット・ロックフェラー)。
⑥世界政府を作る時、健全な強い政府があっては困る→アメリカの金融資本家はアメリカを弱体化させてもよいと考えている。

(2)グローバリズムの基本的問題
①推進者は国家ではなく、国益概念のない私益優先の国際金融資本家

(3)一方、ナショナリズム
①国民国家、国家経済、国益を守るもの

(4)グローバリズム思想への懸念
①美しく響くロジックを持っている。多文化共生、地球市民、ジェンダーフリーなど。
②これらは国民意識を劣化させる。

●グローバリズムは21世紀の「共産主義」
(1)共産主義は貧富の2極化を招いた。グローバリズムも同じ。
(2)共産主義は一党独裁で大衆を搾取。グローバリズムは一部の金融資本家が大衆を搾取

●プーチンの目指す「ロシアの新しい理念」と日本
(1)人道主義に基づく世界の普遍的価値とロシアの伝統的価値とを有機的に統一する。

(2)プーチンが求める国家の発展モデル
①産業の近代化による「繁栄」と伝統的価値観の維持による「安定」の同時達成
②ロシア型の近代産業国家の建設、強い経済が最大の安全保障、近代化と自らの価値の創造
③その発展モデルは何か→日本の協力なしには成功なしであろう。

(3)プーチンが日本との協力強化を望む最大の理由
①日本の明治維新以降の国民国家としての発展の歴史、政府の殖産振興政策(行政指導、銀行政策等々)。
②一方では伝統を維持した日本。その具体策としての日本的経営

(4)ロシア人と日本人には類似性がある
①国土観→ロシアは母なる大地。日本列島は神々が生んだもの。共に同胞意識を持つ
②宗教観→ロシア正教は原罪否定、日本人は性善説
③国民意識→ロシア人は集団主義(ロシア人自らが言っている)。日本は勿論集団主義。

●グローバリズムに対抗できる日本型モデル
(1)ものづくりの精神
①古事記が示す神様も働く国→労働は神聖
②稲作農業→生産主義、村落共同体による助け合いの精神はあらゆる生産活動の基礎
③日本的経営→会社は一種の血縁共同体、大家族、協調、和の重視

(2)製品に魂を吹き込む
①ウクライナ紙編集長の話:日本滞在の最終日、日本で何が一番気に入ったかを問われ、「日本人」と答えた。なぜなら、「日本にある素晴らしいものは日本人によって作られたばかりでなく、日本的精神が宿っているからだ」
②メイド・イン・ジャパンの製品を買いたい
・物にも生命が宿っている→人間も山川草木も鉱物も神々から生み出された同胞→自然との共存、環境保護→グローバル市場化による環境破壊を防止する思想

(3)労働は神事
①高天原の神々も働いておられる(稲作、機織り、漁労)
②仕事は仏道修行、職場は精神修養の場
③資本家に搾取されている、働かされているという感覚はないか薄い→資本と労働の対立観がない
④日本的資本主義の精神は、資本(株主)優先ではなく、生産(ものづくり)優先

(4)ユダヤ・キリスト教的労働観
①労働は神々による罰(創世記)
・人間原罪説:男は額に汗して働く苦しみ、女は出産の苦しみを神の教えに背いた罰として与えられた
②ハルマゲドン(世界最終戦争)待望論
  ・人生は苦痛、世界は不幸→救世主の出現を待ち望む

(5)天壌無窮の神勅「知らす」の意味(古事記)
①農業を盛んにし、民を富ませ、国を繁栄させ、国民をまとめる
②この精神で日本は朝鮮、台湾の経営に当たった(欧米流の植民地搾取ではない)→朝鮮も台湾も繁栄した(韓国の反日→日本から独立を自ら勝ち取らなかったのがトラウマになっている)

(6)ものづくりを重視する経済
①各人が分を尽くすことによって社会(会社)が発展する。資本万能主義、経済効率主義ではない→国民経済主義である。
②対置にあるのが金融資本主義、グローバル経済主義

(7)日本人の智惠
①造り変える力→グローバル経済主義をいかに日本人の経済観に合うように造り変えるか
②「まとめる(バランスを取る)」は、日本文化
③グローバリズムとナショナリズムのバランス(物質主義と精神主義のバランス)を如何に取るかが世界を救うモデルになる    

●北方領土返還のチャンス
(1)ロシア再生に対するプーチンの想いを実現できるのは「日本型モデル」。北方領土返還を求める日本との間で、Win-Winの関係を築けるチャンスが到来している。

(2)日本はグローバリズムに対抗できる文明的手段を持つ。それを背景にした安倍首相の対露外交深化は世界史的意味を持つであろう。

以上
(うまし太郎)

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講演会 | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2014/04/19 10:00
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